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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)3358号 判決 1954年1月16日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人早見幸治の弁護人稲葉誠一の上告趣意第一点について。

所論は本件犯行当時禁止されていた主要食糧たる麦の買受は昭和二七年五月三一日から麦の統制が廃止された結果その禁止が撤廃されたから原判決があった後に刑の廃止があったものであるというのである。そして昭和二七年五月三一日政令一六七号(食糧管理法施行令の一部を改正する政令)によって大麦、はだか麦又は小麦が主要食糧から除外され同年六月一日以後、現在では麦の買受が犯罪を構成しないことは所論のとおりである。しかし麦が主要食糧から除外されても既にその前に成立した主要食糧買受の罪に対する刑が廃止されたものということはできない。このことは物価統制令第三条違反の行為があった後に主務大臣の告示が廃止されても刑の廃止とならないとした当裁判所大法廷判決(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決、集四巻一〇号一九七二頁)の趣旨からも自ら明らかであるのみならず、馬鈴薯が主要食糧から除外されても既に成立した主要食糧(馬鈴薯)輸送罪に対する刑は廃止されないとした判例(昭和二四年(れ)第二四七一号、同二六年三月二二日第一小法廷判決、集五巻四号六一三頁)もあるのであって、これらの判例は今これを変更する必要を認めないのである。従って所論は採用できない。

同第二点について。

所論は量刑不当の主張であるから適法の上告理由にあたらない。

被告人加藤道雄同沼尾清の弁護人星清の上告趣意第一、二点について。

所論は単なる法令違反の主張に過ぎないから、適法の上告理由にあたらない。(なお食糧管理法施行令六条の生産者の意義に関する原判示は正当である。昭和二三年(れ)第一二五八号昭和二四年二月一〇日第一小法廷判決参照)

同第三点について。

所論は量刑不当の主張に過ぎないから適法の上告理由にあたらない。

なお記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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